教養とは分断を認識する力である
「アメリカは自由の国」という神話
日本の文化に対する意見なんかを眺めると、「電車内で電話さえしちゃいけない日本は堅苦しい」とか「日本で知らない人に声をかけたら気味悪がられるのが嫌だ」とか「目上の人には敬語を使って媚びないといけないのがめんどくさい」といったような考えを持つ人が一定数いることはみなさんご存知でしょう。私の経験から踏まえて、多くの人が「日本人は周囲を気にしてばかりである」と思っているようです。そして、その次に話題に上がるのは「アメリカなどの外国ならこんなこと気にしなくていいのに」という話です。もちろんそれはそうですが、あなたが既に察しているように、アメリカはアメリカでめんどくさいことがたくさんあり、アメリカ人も案外周囲の人のことを気にしているものです。
私はアメリカについて偉そうに語れるほどアメリカに関する知識があるわけではないですし、一言に「アメリカ」と言っても州によって文化が全然異なるのですが、アメリカでは人種の違いや宗教の違いや性自認の違い、政治に関する意見などは日本国内よりもはるかに重大な事柄として扱われているようです。日本国内では白人と黒人の違いなどほとんど考えずに生活できますし、多くの人が無宗教なので多くの飲食店はハラルフードやベジタリアン向けの料理に関して思い煩わなくていいし、自己紹介で自分の性自認(私のことをHeと呼ぶかTheyと呼ぶかなど)を伝えることはまずありません。もちろんこれら三つはマイノリティを守るために大切なことなのでしょうが、日本で生きてきた私にとってはかなり面倒臭い文化です(初対面の人と会ったときにそれぞれの顔と名前だけじゃなくて性自認まで紹介されるとそれだけ覚えることは多くなりますよね)。
これら三つのトピックの重要性は日本人でも分かると思いますが、例えばカトリック教会とプロテスタント教会の違いを知っている日本人は多くないでしょう。これらは日本人にとっては「教養」で、アメリカでは「常識」とされる知識だと思います。アメリカに旅行してプロテスタント系のクリスチャンに「天国に行くために、あなたは日々良い行いをされているんですか?」などと質問すると、嫌な顔をされることがあるということです。面倒臭いですね。ちなみにカトリック教会やプロテスタント教会の中でも宗派はめちゃくちゃ分かれています。逆に、日本では「令和の時代なのにこの人は時代遅れな考えをしている」と時々話す人がいますがアメリカでは令和かどうかによる時代の分断は存在しないわけです。
要するに、この世界は「電車内で電話していいと思う人vs思わない人」「歳上には敬語を使うべきだと思う人vs思わない人」「ヴィーガンvsヴィーガンじゃない人」「平成vs令和」などの境界線で無数に細分化されており(もちろん必ずしも二項対立では無いですが)、ある集団の中であまり意識されていない境界線は「教養」とされ、ある集団の多くの人間に意識されているものは「常識」とされるということです。他にも、マナーと呼ばれているものは、教養と常識の間にあり、価値観と呼ばれるものは教養よりもさらに細分化されているものと捉えています。つまり、価値観や教養やマナーそして常識(はたまた本能や法律?)は全て同質のものであってそれらの違いは各境界線を認識している個体の多さの程度によるもので、価値観 < 教養 < マナー < 常識 (< 本能) といった順序尺度が考えられるという話です。(尺度はもっと細かくすることも可能です)
一番多くの人に合意されている境界線は国境あたりでしょうか。ある程度知能のある動物の間で一番合意されている境界線は「生と死」ですかね。
教養があるとは
私が幼い頃は、「みんな同じ地球に住んでるんだから仲良くすれば良いじゃーん」と思っていましたが、教育を受けるにつれてそんなことを言っていられない事情が明らかになってきました。一般的な日本人の集団を考えた時、「地球は一つの惑星だから国境なんて存在しないぜ」と言って勝手に国境を越える人は犯罪者だし、「アメリカ出身だから敬語知らねぇぜ」と言って目上の人に敬語を使わない人は常識知らずで、寝癖がついたまま採用面接を受ける人はマナーがなっていなくて、日本の有名な文学作品を全然知らない人は教養が無いとされることでしょう。
価値観に関しては、どれが良いとか悪いとか一般に言えることではないのですが、世の中には他人の価値観を理解しようとせずにズカズカと人のテリトリーに入り込んでくる人がいます。これは国境を無視して勝手に入国する犯罪者のようなもので、教養のない人には他人の価値観を形成する境界線が見えておらず、その人が自分勝手に引いた境界線ばかりで世界地図を形成していると言えるでしょう。
太宰治の「正義と微笑」という小説に、「学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。」という一節がありますが、教養のない人が他人の価値観を無視するという先ほどの話と似ていますね。
つまり、教養を身につけるというのはより多くの分断に対して自覚的になるということであり、教養があるとは多くの価値観やマナーや常識を認識していることなのです。
ちなみにですが、「他人に自分の価値観を押し付ける人は間違っている」という意見はそれ自体が相対主義に依拠した価値観を人に押し付けていることになるので矛盾しています。寛容のパラドックスで出てくる話ですね。これは教養でしょうか、それとも雑学でしょうか、はたまた常識でしょうか。議論する意義はありませんが。
結局何が言いたいのさ
私は教養を身につけるというのはより多くの分断に対して自覚的になるということであると先述しましたが、だからと言って「より多くの教養を身につけてより多くの分断を知り、その知識を持って他人により優しくするべきである」とは思いません。例えばあなたが教養を身につけることによってヘルプマークの意味やHSPやギフテッドの方の存在、飲み会での食事マナー、部下に嫌がられない接し方、女性のエスコートの仕方などが分かり、より人に優しくできるようになるかもしれませんが、それらの知識によってあなたの行動が制限されるべきではありません。女嫌いなのに女性をエスコートし、仕事終わりでクタクタなのにこれからハイキングに行こうとしている老人に電車の座席を譲り、理不尽な客に暴力を振るわれても客の機嫌を取り続ける生活を苦痛に感じる人は多いと思います。
したがって、多くの既存の境界線・知識を学んだからと言ってそれらを守る必要はないのです。女嫌いなら女性のエスコートなんか無視して女の子を車道側に歩かせ続けても良いし、疲れていてどうしても座りたいなら老人に席を譲らなくても良いし、理不尽な客を暴力で黙らせても良いし、捕まっても気にしないなら国境を無断で反復横跳びしても良いということです。自分の価値観を形成する境界線はただ自分で引けば良いのです。教養なんてのはあくまでも自分の認知の可能性に関するものに過ぎず、他の境界線をどれだけ細かく見られるかという視力のようなものなのですから、自分の価値観の境界線を引く際に他の境界線を考慮するかどうかは全てあなた次第であり、あなたが引いた境界線に賛同する人が多ければそれはやがて新たな教養やマナー、常識と呼ばれることになるでしょう。
リアルタイムASCIIアートと流体シミュレーション
この記事はHiCoder Advent Calendar 2021の25日目の記事です。
メリークリスマスということで記事を書いていきます。
上記のサイトを使う際の注意点として、モバイルブラウザやSafariには対応していないためパソコンのChromeなどを使う必要があり、また物体を上手く認識させるには白い背景に物体を写す必要があります。
あとシミュレーションの際の障害物を1パターンしか作成していない上に、割とバグがあって流体が物体をすり抜けたりめちゃくちゃな速度で反発することがありますがそこは目を瞑ってください。
Webプログラミングは初めてでしたがほとんどのコードは以下のリポジトリから流用させて頂いたので僕自身はあまりコードを書いてません。
https://github.com/idevelop/ascii-camera
https://github.com/davidedc/Basic-fluid-simulation-in-the-browser
行なっている処理は、まずウェブカメラの映像を白黒に変換して画素の明るさごとにASCIIを割り当てて、ASCII文字列に対してSPH法を用いてシミュレーションを用いるというものです。
SPH法とはかなりざっくり説明するとたくさんの粒子を用いて擬似的に流体をシミュレートするもので、重力や他の粒子との距離から粒子ごと(今回だと画素ごと)にかかる力を計算してそれぞれの粒子の速度を求めて粒子の移動を計算しています。
もう書くことなくなっちゃったので終わります!!!良いお年を!!!
夏休み中に考えていたことなどを書き連ねる
話し相手が居ないし夏休みに入ってから考えてたことを覚えてる範囲で分散的に書き連ねることにする。
①自己表現について
自己表現欲が溢れているせいか、最近とても文章を書きたい衝動に駆られるけどいい題材が見つからなくて後回しにしていた。
文系の学生だとレポートとかで自分の主張を表現する機会がありそうだから自己表現欲が満たされてブログ始めたりSNSで何かしらに意見したりしないのかなあとか思った。文系の学生が何してるのかも弊学の他の学生の活動も知らないから根拠のない憶測だけど。
いくつかブログの題材になりそうな物はあったけれど、対して深い知識もない分野に関する意見をブログという一方向的なメディアで発表するのは気が引けた。
人と対話する際には他者の意見を聞くことで自分の意見を見つめ直せたり新たな知識を得られたりするが、ブログはそうではない。自分が間違ったことを言っていた場合にそれを正してくれる人がいないというのは恐ろしい状況だと感じる。
だから専門的な知識がない人がブログに書く題材は自分の私生活についてなど、とても個人的な話題の方がいいと思う。
ちなみに一瞬書こうかなと思っていたのは「思考停止しがちな現代人と寛容主義的な思想の登場、そしてSNSの存在の三つの相性が悪すぎる」という話だった。
②優生思想がなぜ悪いのか
この前DaiGoが炎上していたことから優生思想がなぜ悪いか考えていた。
Twitterを見ると「それは優生思想だ!まるでナチスだ!最低!」みたいな意見がいくつか見られた。
しかし、優生思想とナチスを直感的に結び付けてすぐさまそれを悪とすることができるのか、世の中の人たちは熟考せずに直感的に優勢思想を非難できるほどに反優生思想を持っているのか疑問だった。出生前診断は優生思想と言えるかどうかみたいな議論もたくさんあるのに。
とはいえこの疑問は優生思想を直感的に悪として非難できない自分への焦り故だったような気もする。結局のところ、自分に人権思想が十分に身についていないせいなのだろうと一旦結論付けた。専門知識は無いのでこれが正しいかは分からない。
③高校時代のこと
高校時代も友達は多くなく、二人のクラスメイトと一緒にいることが多かった。
その二人とは性格は概ね似ているが根本的な思想は驚くほどに全員ばらけていた。
三人とも性格や思想はわりとこじれていたとは思うので一言で表すのは難しいが、一人は楽観的・無計画、一人は超悲観主義・成果主義、一人は自意識の塊・ひねくれ者みたいな感じだった。
三人で何かの題材について議論すると必ず意見が割れて言い合いみたいになることが多かった。
どうしてこうも思想が違うのか今までずっと疑問で明確な答えは出ていなかったが、育ってきた家庭環境によってそれぞれが求める愛の形が違うのだろうかと最近ふと思った。
うまく言葉にできるほどまとめられていないが、三人とも愛の欠乏を感じていたという点は共通していたものの、三人が求めていた愛というのは「母親的な無償の愛」、「父親的な成果主義的な愛」、そして「相手に完全性を求める偶像崇拝的な愛」といったようにそれぞれ異なるものだったのではないか。ということだ。
まあ、だからといってどうという話ではない。
④一人暮らしの食生活
2年次から自炊を始めた。
2年の4月は料理というものが分からず、とりあえず鶏肉と大根をフライパンで焼いたものなどを食べていた。
当時は自分の料理したものが何故あまりおいしくないのだろうと感じていたが、美味しい料理を作るには味付けという工程が必要だと知るのはもう少し後のことだった。
2年の5月から11月まではカレーを食べていた。
最初はレシピを見ながら四苦八苦していて作るのに2時間かかっていたがいつしかレシピガン無視で適当にキャベツを手でちぎって入れたりなすびをハサミで切って入れたりするようになって30分以内に作れるようになっていた(ほとんどは煮込んでいる時間)。
結局カレーに飽きることは無かったが、鍋を持っていなくてフライパンで3日分くらい一気に作るから毎回フライパンから溢れるギリギリになっていたのと野菜を買いに行くのがめんどくさいのとフライパンを洗うのがめんどくさいのと3日分しか作り置きできないということが嫌になってもっと楽な料理を探すようになった。
それで2年の12月上旬は焼きそばや適当な炒め物などを食べていたが12月下旬に電子レンジで調理できる冷凍から揚げというものの存在を知り、3年の4月上旬までずっとから揚げを食べた。
ずっとから揚げでいいような気もしていたが、鶏肉を食べるよりも魚を食べたほうがいいみたいな話を聞いて4月下旬から5月上旬までは魚の缶詰を食べていた。
電子レンジでの調理も必要無く、とても楽だったけれど油が多すぎて明らかに不健康だなと思ったのでここでちゃんと栄養について考えることにした。
栄養について少し調べて、主食を納豆ご飯にすることにして5月下旬から7月までは納豆ご飯を食べていた。しかし、納豆ご飯だけではなく足りない栄養素はサプリメントで摂取することにしたのだ。
サプリメントというと高いイメージがあってろくに調べもせずに避けていたが薬局に売っているサプリを見ると1日20円で必要な量のビタミンを摂取できると知った。
今ではマルチビタミンの他、カルシウムや脂質、食物繊維もサプリメントで摂るようにして、タンパク質はプロテインを飲んで摂ることにした。
ちゃんと体に吸収されているかは知らないが必要十分な栄養素を経口摂取しているはずだ。
1か月半納豆を食べていて、これまで食材に飽きることは無かったのに納豆は飽きて食べるのが嫌になった。そして8月半ばからはキムチが主食になった。
僕は普段、1食にかかる時間が5分・1日当たりの食費は150円以内みたいな生活をしているのだけど他の学生はどんな暮らしをしているんだろう。
⑤孤独について
特段詳しく書くこともないが年々話す相手が少なくなった。
夏休みに入ってからちゃんと話したのは多分四人だけ。
人間が孤独を解消するために行動している、というのを最近よく感じていて、自分の行動原理が孤独からの逃避なのではないかと思っている。
⑥ご冗談でしょう、ファインマンさん
「ご冗談でしょう、ファインマンさん」というのはノーベル物理学賞を受賞したファインマンの自伝のこと。
きっかけが何かは忘れてしまったけれど読むことにして、西図書館の広大生のための123冊のコーナーにあったから借りてきた。
読み始めるとあまりに面白くて気が付いたら読み終わっていた。
ファインマンは「“本当にわかった”と思うのは、物事に二通り以上の説明ができた時だ」と語っていたのだが、本書ではファインマンの同様の思想が繰り返し述べられており、僕も最近はすっかりその思想に染まっている。
最近見た計算機科学者であるDonald Knuthによる若者へのアドバイス の中でも本質的に同じようなことが語られているように感じたのも興味深かった。
123冊のコーナーは教養本みたいなものばかり置いてあるイメージで内心小馬鹿にしていたがもっと早くこの本を読むべきだったなと思った。
孤独を感じて頭のいい人と話をしたくなった時にまたこの本を読み返すと思う。
⑦会うことが無くなった人達のこと
いつかは仲が良くてよく話していた人達の中にも今は全く話さないし何をしているのかも知らない、という人がたくさんいる。というかほとんどそうだ。
会いにくい現状とかは置いといて、また会って色々と話をしたいなと思っているけれど多分こんなこと考えてるのは僕だけで、たとえ実際に会って話をしたとしてもどこか気まずい空気が流れるような気がしている。
これまで大学で出会った人達とも卒業するまでに会って話をしたいとは思っているけれどきっと別れの挨拶もせずに二度と会わなくなるんだろうなと感じる。
学部1,2年の間に図書館で借りた本を振り返る
弊学図書館のホームページでは自分の利用状況のページでこれまで借りた本の履歴が見られることをご存じだろうか。
これまで大学で過ごした2年間、僕はたまに図書館で本を借りており、どうやら累計貸出件数は71件らしい。この2年間は731日であったことを考えるとこれは少ないように思える。さらに、まだ確認はしていないが恐らく同じ本を複数回に渡り借りた場合重複して記録されているだろうし、借りたまま読まずに返した本、現在借りていてまだ読んでいない本もかなりあるので実際に読んだ本はこの半分以下だと予想している。
とりあえず入学時から順に、記憶にある本に限って振り返りをしようと思う。(カッコ内は貸出日である。)
1.毒の科学(2019/04/26)
夏ごろまでは医学や脳科学に関連する本をよく読んでいた気がする。一年生の頃は通常通り通学していたこともあり、気になる本は図書館で読んでそのまま返すことも多かったためリストに載っていない本も多いが、この本はなかなか分厚く図書館ではとても読み通せなかったので借りて読んだ。後に教養ゼミで自分の好きなものについてプレゼンをすることになり、特に好きなものが思い浮かばなかったので大部分をこの本の内容から引っ張ってきて毒に関するプレゼンをした。この本は毒に関する歴史的な話から始まる。魔女狩りで罪に問われた魔女たちには薬草の知識に長けた女性が多く、彼女たちが近代薬学の発展に大きく貢献した、というような記述が印象に残っている。中でも僕の印象に最も残っている毒杯を仰いだソクラテスの最期に関する記述を引用して次の本に移る。(確か本筋ではない話だが)
あのお方(ソクラテス様)はあちこち歩きまわっていられましたが、やがて脚が重たくなったと言われて、仰向けに休まれました。すると、毒を手渡した男(獄卒)は、あのお方のお身体に触り、暫くしてから足先や脛のほうを調べ、それから足の先を強く押して、感じがあるかとたずねました。
「ない」とあの方は答えられました。
つぎに、また脛に同じことをし、こうしてだんだん上にあがっていって、しだいに冷たくなり硬くなってゆくのを、ぼくたちに示しました。そして、もう一度触ってみて、これが心臓まできたらおしまいです、といいました。
2.事件から見た毒(2019/05/15),
3.社会のなかに潜む毒物(2019/05/15)
教養ゼミで毒について発表することにした時に毒の科学に加えて借りた。
カレーは味が濃くて毒物の味を隠しやすいから毒殺によく使われるらしい。和歌山毒物カレー事件は有名だろう。
4.自殺の心理学(2019/06/04)
借りたけど思案橋(総合科学部と工学部をつなぐ橋)の下のベンチで全て読み切ってしまってすぐに返却した。
内容はタイトルの通り。印象に残っているのは自殺率は子供が一番低く高齢者が一番高いということ。高齢者は孤独になるなどして自殺を決意することが多いだけでなく、体が弱っているため若者と同じ方法で自殺を図っても生き残らないことが多いらしい。若い層の死因の第一位が自殺であることがよく問題視されているが、高齢者はもっと死んでいる。また、子供の自殺に対する考えについて書かれていた部分も面白かった。小学生が画びょうを飲み込む事故があった。周囲の大人は当初、ただの好奇心か何かだろうと考えたがよくよく本人に話を聞くとその子は学校でいじめられ、希死念慮を抱いて画びょうを飲み込めば死ねると信じ切って行動に移したようで、これはれっきとした自殺未遂であった。というような話だ。子供との関わり方を考えさせられた。
5.無意識の構造(2019/06/04)
ユング心理学の考え方を通して自我について考える、みたいな感じだったはず。難しくてあまり理解できなかった。
6.退屈なことはPythonにやらせよう(2019/06/04)
授業外でプログラミングをしたのは確かこれが初めてで、三日間授業終わりに図書館でこれを読んでレポート課題の半自動化プログラムを作った。当時は負担が軽減されて結構嬉しかったが、かなり酷い出来なので今ではもう動かない。
7.世にも奇妙な人体実験の歴史(2019/06/05)
麻酔や薬、ビタミン剤、病原菌、ウィルス、寄生虫、放射線など、現在の科学では当たり前のように扱われているものを解明するため、医学の発展に自分の身を捧げた知的好奇心の塊の科学者(マッドサイエンティスト)たちがいかに苦労して作り出したかというエピソードが全17章に渡り詰まった本。科学者たちが自ら寄生虫を体内に入れたり病原菌を打ったり患者の嘔吐物を摂取したり意図的に漂流してプランクトンで命を繋いだりした話が載っている。
医学の歴史の本は好きでこれ以外にも色々読んだが昔の医学はかなり狂気に支えられていて面白い。特に外科の歴史。(ロバートリストンの死亡率300%の手術はそれなりに有名だろう)
8.英語喉50のメソッド(2019/06/24)
知名度は低いしなんとも胡散臭いけれど英語の発音の日本語教材ではこれが一番良い気がしている。英語発音専門ドクターDイングリッシュというYoutubeチャンネルでも喉の重要性はよく強調されている。この本の著者は確か純ジャパだったと思うが、発音は本当にネイティブレベル(というかアジアのネイティブ英語話者よりもずっとアメリカ英語は上手い)である。が、なんとなく読み進められず貸出期間を延長してはまた借りて延長してはまた借りて...を繰り返して現在でも全然読めていない。
個人的には英会話発音矯正アプリELSAの方が好み。
9.アイデアのちから(2019/06/24)
世の中の素晴らしいアイデアやストーリーは全て「単純明快で、意外性があり、具体的であり、信頼でき、感情を揺さぶり、物語性がある」というもの。個人的に、成功している人や物の共通点を取り出すだけで、その結果に至るために必要であった深い思考や工夫を扱わないのはあまり意味がないという考えなので、ほーんそうかそうか、という感想。
10.秘密基地の作り方(2019/07/01)
タイトルでわくわくして借りたが正直期待外れだった。椅子を二つ並べたところに布をかぶせるなど、家の中でいかにして秘密基地気分を味わうか、みたいな感じのがたくさん書かれている。幼いころに自分の家の狭いスペースに座布団や布団を持ち込んで秘密基地ごっこをしていたことがあったので懐かしい気持ちにはなった。
11.機械学習入門 : ボルツマン機械学習から深層学習まで(2019/07/01)
ボルツマン機械学習を中心に、イラストを使って機械学習の仕組みをわかりやすく解説してくれる本。面白くてサタケメモリアルホール前のベンチで一気に読んだ。読んでから知ったが、ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書 大賞2018で大賞に選ばれているらしい。
この本のシリーズの続きであるPythonで機械学習入門: 深層学習から敵対的生成ネットワークまでは図書館に無かったので僕が購入依頼をして大学に購入して頂いた。あれは結局序盤しか読んでないや。
12. アルゴリズム図鑑 : 絵で見てわかる26のアルゴリズム(2019/07/05)
アルゴリズムが絵で見てわかる。たのしい。
13. 123人の家(2019/08/05)
名前の通り123人の家の写真が載ってる分厚い本。工学部のデイリーヤマザキ前でさらっと眺めた。建築やインテリアが好きな人にとっては面白いかもしれない。
14. 脳には妙なクセがある(2019/08/05)
損をすると分かっていても宝くじを買ってしまう、楽しくなくても笑顔を作ると楽しくなるといった脳の不思議な性質が解説されている。池谷先生の本なのだが、脳科学分野で面白いなと思った本の多くは池谷先生が書かれているので凄い。
15. 脳科学は人格を変えられるか?(2019/09/17)
文章が専門的で難しい。楽観的な人間は幸福で悲観的だと成功しない、という著者の信念が繰り返し記述され、悲観的な人間が楽観的な人間に変わるにはどうしたらいいか等が書かれている。元々は海外の本なのだが、Rainy Brain, Sunny Brainという原題がわりと好き。
16. アルゴリズムイントロダクション(2019/10/02)
全然読めてないから中身とかあんまり知らないけど昔からアルゴリズムと言えばこの本、という感じではあるのだろうか。読みたい気持ちだけはあるんだけど分厚さに心が折れてしまう。
17. 青年の生と死との間 : 出会いへの軌跡から(2019/11/30)
全然有名な本じゃないが中央図書館の書庫をブラブラ歩いてたらたまたま見つけて衝撃を受けた本。京都大学でカウンセラーをしていた方のもとに相談に訪れた自殺に駆り立てられた13人の青年との臨床記録。自殺既遂者、自殺未遂者、自殺を思いとどまった者、それぞれの物語が記されていて色々と考えさせられた。(色々考えさせられた、以上に薄い感想も無いと思うが。)永遠のモラトリアム、というフレーズがなんとなく頭に残っている。
18. 哲学用語図鑑(2019/11/30)
哲学の本を何度か読もうとしたが全く理解できず挫折した。(この本の前後にもいくつか哲学の本を借りているが何一つ内容を覚えていない。)せめて用語だけでも、と思ったけれど用語の説明だけじゃ哲学への理解は全く深まらなかった。現在も哲学に関する本は時々手に取るが理解できずにいる。
19. 日本の反知性主義(2020/04/09)
東大の二次試験で扱われた本。「反知性」とは何か。などが書かれている。
東大入試で扱われる文章は面白いのが多く、ランダムに良書を引きたいときは参考になるかもしれないが、個人的にはこの本はあまり面白くなかったように感じた。
20. 線形回帰分析(2020/08/04)
線形モデルの授業の教科書。6000円以上するのに買え買え言われるし結局全然いらなかったしなんなんだ。
21. コンピュータはなぜ動くのか(2020/08/04)
市内に行く途中に電車で読んだ。コンピュータに関する初心者向け、だそうだが回路図、プログラム、アルゴリズム、データ構造、データベース、ネットワーク、暗号化、XMLなどが扱われており完全な初心者には難しいだろうと思ったがシリーズ全体として良いと思う。(初心者が何言ってるんだ。)
22. 電話はなぜつながるのか(2020/09/14)
なぜシリーズ。ネットワークについていっぱい知れるのかなーと思ったらめっちゃ電話の話をされてそれから記憶がない。
23. 情報はなぜビットなのか(2020/08/04)
なぜシリーズ。はい。
24. Webを支える技術(2020/09/14)
【転職エントリ】Googleに入社します|Lillian|note
この記事に出てきて存在を知り、結構じっくり読んだのだが理解が浅いためもう一度読みたいなと思っている。REST推しが凄かった。
25. アルゴリズムとデータ構造(2020/09/28)
アルゴリズムとデータ構造の授業の教科書。(申し訳程度の検索除けのために著者名を書かないがその授業の先生の本。)これ買ってねって言われたけど配布資料に教科書の内容そのまま書かれてたから別にいらなかったしなんなんだほんとに。
26. 一般化線形モデル入門(2020/10/23)
一般化線形モデルの授業の教科書。教科書の内容はスライドに書かれてあったし、課題は教科書のページで指示されることがあったが周りの誰かが教科書を借りてたら問題ない。確か英語版のPDFはネットに落ちてたはず。
27. 問題解決力を鍛える!アルゴリズムとデータ構造(2020/11/12)
いわゆるけんちょん本というやつ。僕が購入依頼を出したのだが、やはり人気なのか借りた後にすぐに次の予約者が出たため貸出延長できずDPのところまでしか読めないまま返却してそれっきり。
28. コンピュータシステムの理論と実装(2021/01/26)
俗に言うnand2tetris。実はあんまり詳しく知らないけど雑に言うとコンピュータを作るらしい。これも僕が購入依頼を出したもの。届いたのが期末試験直前で、試験が終わってさて読もうと思ったら次の予約者が居て泣く泣く返却した。今も予約していて返却を待っているが、購入依頼出したんだからもう少し優先してくれたって...という気持ちを少し抱いてしまう。
29. 色彩 : カラーコーディネーター入門(2021/02/02)
配色のことを知りたいなと思って借りた。カラーコーディネーター検定の教科書らしい。配色に関する部分をさらっと読むだけなら別にいいのだが、教科書では学術的、工業的な話も載ってあり、副教科が苦手だった僕はこれを覚えなければいけないカラーコーディネーター検定は大変だなと思った。
30. 日本人の9割が知らない遺伝の真実(2021/02/05)
めっっっっっっちゃおもしろい。これを読んでからしばらく本の内容が頭から離れずにいる。行動遺伝学の観点から主に教育の在り方などについて説いている本。行動遺伝学の研究結果などの紹介しながらも語り掛けるような文章で読みやすい。胡散臭いタイトルだがその点については本を開いてすぐ説明される。以下のツイートにてこの本に載っている表が見られる。
「日本人の9割が知らない遺伝の真実」を読みました。お子さんの教育に関心のある親御さんは全員読むべきかも。様々な形質が遺伝と非共有環境で説明できてしまうという驚きの事実。遺伝や教育など誤解しやすい内容なのでしっかりと読まないといけないです🙂 pic.twitter.com/HtI4lny5Q4
— Yukie Yamaguchi (@luckystar___) 2021年2月4日
31. 東大入試に学ぶロジカルライティング(2021/02/15)
東大の学部の二次試験及び東大の法科大学院の入試で扱われた問題と問題へのアプローチが載っている。問いへの答え方や文章の書き方が分かるのも面白いが、入試問題がたくさん載っていてどれも問題の文章自体が面白いので読んで損はしない。
32. 理科系の作文技術(2021/02/15)
古い本だが先生たちは結構この本を参考にしている気がするから一読したらいいと思う。
借りた本はこれくらいなようだ。人の評判を聞いて本を読み始めたのはごく最近なので前半は自分しか興味が無さそうな本ばかりだ。これだけの本を自分で購入しようとすると金額が馬鹿にならないので大学の図書館には本当に感謝している。
最後に一言。
みんなもっと新規購入依頼出してくれ~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!
洗濯機が「せんたっき」と呼ばれる理由
こんにちは。
突然ですがみなさん普段「洗濯機」をなんと発音していますか?
せんたっき
頭の中では「せんたくき」が本来の発音であると理解していながらもつい「せんたっき」と呼んでしまっていませんか?
その原因は「言いやすいように発音が変化した」なんていう曖昧なものではありません。
人が「せんたっき」と言ってしまうことにはれっきとした理由があります。
一度、洗濯機とはどんなものなのか考えてみてください。
洗濯機とは「衣類などの布地を洗う機械」ですよね?
この記事を読んでいる人で日常的に洗濯機を使わない人はいないと断言できるくらい私たちの生活に欠かせないもの。それが洗濯機です。
しかし、そんな便利な洗濯機にも忘れられがちな欠点があります。
それは、洗ったものが縮む可能性があることです。
セーターを洗って縮ませてしまった経験。ありませんか?
そして、洗濯機を「せんたっき」と発音してしまう理由はまさにここにあります。
僕が先ほど書いたように、洗濯機にはものを縮める性質があります。
つまり、「せんたくき」に入っている文字も縮むことがあるんです。
そこで、「せ・ん・た・く・き」の中にある「く」が洗濯機の性質によって変化する過程を見ていきましょう。
まずこれはいたって普通の「く」です。
きゃ~~~♡♡♡かわいい♡♡♡♡
「く」のためなら納税だって苦(く)じゃない!なんつって!
これは洗濯されて縮み始めた「く」です。
ちょっと誰よ!!!!
「く」は縮みやすいから洗濯機に入れないでって言ったでしょ!!!ねえ!!!!!
ああーーーー!!!!
「く」負けないでーーー!!!!!
ダメだってーー!!!!!
あああああああああああああああああああ!!!!!
ちょ、これ絶対曲がっちゃいけない方向に曲がってるって!!!!
アイタタタタ!!!!
ねえ!!!!!ねえってば!!!!!!!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!
「っ」
もうお分かりでしょうか。
「せんたくき」が「せんたっき」と呼ばれてしまうのはこういった平仮名の構造と洗濯機の性質が原因だったんです。
つまり、せんたっきと呼ばれるようになった原因は、縮みやすい「く」を「せんたくき」の中に入れてしまった洗濯機の名付け親のミスなんです。
なので、洗濯機を「せんたっき」と呼んでしまうあなた。
自分を責めないでください。
あなたのせいじゃありません。
泣くのを、やめてください。
この記事を読んで少しでも自分を責める人が減るのであれば幸いです。
最後まで読んで下さりありがとうございました。
P.S.
僕はエヴァが何の物語かさえ知りませんが、もしもこの記事がエヴァの新作映画のネタバレになっていたらごめんなさい。
おじいちゃんであそぼう
この記事は広島大学ITエンジニア Advent Calendar 2020 - Adventarの25日目の記事です。
春はあけぼの冬はアドカレということでアドカレに初参加しました。
(最終日がアドカレ初参加の人間でいいのでしょうか。)
僕は今月勉強し始めたFlutterについて話そうと思います。
とりあえずFlutterでとても簡単なアプリを作ってみたのでITに興味がない人もぜひこれだけは見ていってください。
作ったもの
今回作ったのはランダムなおじいちゃんの画像とランダムな文章を表示するアプリです。色んなおじいちゃんに色んな事を言わせたい気分になった時に使えます。
本当はザ・たっちのたくやとかずやを仕分けるアプリなど、もっと色々作って並べたかったのですが時間が無くて断念しました。
たくやとかずやを見分けられなかったらキムチでもあげて反応を見てみてください。
Flutterとは
FlutterとはGoogle社が開発している、クロスプラットフォームに対応したアプリケーションフレームワークです。
正確性を欠く恐れがありますが超ざっくり言うと、Flutterでアプリを作ると一つのソースコードを書くだけでiPhoneアプリ、Androidアプリ、Webアプリ、パソコンのアプリとして動かせるよ!ってことです。ドラえもんの道具で言うとほんやくコンニャクといったところでしょうか。
Flutterで採用されている言語はDartです。個人的にDartはJavaに似ているなあという印象を受けました。情科生は授業でJavaを触ったのでわりと取っ付きやすいかなと思います。
なぜFlutterを選んだか
元々モバイルアプリ開発に興味があり、iOSアプリはMacを持ってないため厳しいのでAndroidアプリを開発してみようと思いました。
Androidアプリを開発する手段は現在ではKotlinとFlutterの2つの選択肢が主だと思います。僕はその2つのうち学習コストの低い(らしい)Flutterを選びました。ちなみにKotlinもJavaに似てるらしいです。
学習コストに加え、Flutterの特徴の一つであるホットリロードに惹かれたということもFlutterを選択した理由の1つです。詳しくは説明しませんが、ホットリロードを使うと記述したコードがリアルタイムにアプリに反映されて高速な開発が可能になります。HTMLとかCSSを書いてるときに近いスピード感での開発ができます。
Flutterに興味を持ってくれた方へ(僕の学習方法)
ぼくはこの記事を参考にして、公式ドキュメントのチュートリアル→UdemyのThe Complete 2020 Flutter Development Bootcamp with Dartをやりました。(まだまだ勉強途中です)
正直最初にチュートリアルをやった段階では何が何だか分からなくてUdemyで学んでようやく理解しました。Udemyの講座は僕のような初学者にもかなり分かりやすく、個人的に先生の教え方もとても好きなのでやってよかったです。あとこの講座は全部英語なのでリスニング力が鍛えられます。Udemyは頻繁にセールが開催されてるのでこの記事で興味を持ってくださり購入しようと思った方はセールを待つ方がいいです。
とはいえ結局はFlutterの仕様に沿った開発をすることになるため公式ドキュメントを読むのが一番かなと思っています。
ということでFlutterに関することをざっくりと書きました。
僕はまだ本当に初歩的なことしかできていませんがFlutterを学ぶのはとても楽しいです。何より気に入っているのはホットリロードで、少しコードを書いてはアプリを動かして確認するということをストレスなく繰り返せるのが経験の少ない自分にとっては嬉しいです。
一緒に勉強できる人がいるとうれしいのでFlutterに興味のある人はぜひ声をかけてください!
深夜徘徊
楽しいキャンパスライフを思い描いて必死の思いで受験戦争を勝ち進み大学に入ったが、大学に入っても友達ができず誰とも話さない孤独な生活が続いて色々限界になった俺は気がついたらまた深夜徘徊をしていた。深夜徘徊をする時はそこらに歩いている野良猫を脅かしたり花壇に植えてある花の茎を結んだりマンションにとめてある自転車のサドルを勝手に付け替えたりしている。別にこれらの行為は最近始めたわけではなく、高校生の頃から時々やっていた。言うなれば俺の趣味は悪趣味なのだ。
そんな時、俺が歩いている前方から「いかにも大学生」な集団が陽気に大声で歌を歌いながら歩いていた。おそらく近所のカラオケ屋 こまいぬ の帰りなんだろう。
すると3時頃に俺がツイートしてから止まっていたTwitterのタイムラインに「夜中に歌う大学生うるさすぎ氏ね」というツイートが流れてきた。この人もこの辺に住んでいたのか。ツイートに♡を押して「僕も聞きました!ほんとうるさいですよね!ありえない!」とリプライを送ろうとしたところで手を止めた。
これだ。
俺の頭に一つのアイデアが浮かんだ。
翌日、また深夜の学生街へ繰り出した俺は弊学 風呂島大学 の学生が多く住んでいそうな生協のマンションの前へ行き大声で渾身のリンダリンダを披露した。
最初のサビを歌い終わってすぐ俺は現場を離れる。
Twitterを開くと俺が望んだとおりにその一件がフォロワーの風呂大生によってツイートされていた。「外にリンダリンダを歌ってるやばいやつがいる」だそうだ。誰のことだろう。俺のことだ。この事実を俺しか知らないだなんてなんと気持ちがいいのだろうか。ニュートンが万有引力を発見した時もこんな気持ちだったに違いない。
それから俺はほぼ毎晩外を出歩いては叫んだ。毎回歌うだけじゃ芸がないから「まじ!?やばくね!?!?」と架空の会話への驚きを表したり、「やばいって!!まじやばい!!!やばいってこれ!!!なんなん!!!!やばいよやばいよ!!!!はんぱないって!!!」と手河鉄朗と一時期ネットで話題になった高校サッカー選手権大会の選手を混ぜたようなセリフを発したり、時には声色を変えて「あたおかとぉ!タピオカはぁ!ぴえんでぇ!!えぐいてぇ!!!」と無理に若者言葉を取り入れようとした狂ったキンハチ先生を演じてみたりした。
俺のパフォーマンスは反響を呼び、次第に俺の声を聞いたというツイートは増えていった。「例の騒音大学生の声聞きたいから夜更かしするわw」というツイートさえ見られる。もはや風呂大生のタイムラインは俺の話で持ち切りで、とても気分がよかった。もはや深夜の俺の叫びは迷惑なものではなくなって風呂大生はみんな俺の叫び声を聞きたがっている。
叫べば叫ぶほど風呂大生の反応は大きくなる。自転車に乗りながら叫んでいるところを飲み会帰りの男子大学生のグループに見られてしまったが彼らは噂の人物に出会えたことを喜び一緒に騒いだ。大学に入って初めて友達ができてうれしかった。
俺は彼らにもっと喜んでもらおうと、クリスマスソングを叫びながらコンビニで買った卵をそこらのアパートに投げつける。
「ウィーウィッシュア メリクリスマス」ペチャ
「ウィーウィッシュア メリクリスマス」ペチャ
「ウィーウィッシュア メリクリスマス」ペチャ
「アンドァハッピーニューイヤー」ペチャペチャ
友達は喜ばなかった。「どうしてそんなことをするんだ」「俺らはもうついていけない」「捕まっても知らないからな」とまで言われた。
こいつらは何を言っているんだ。
最初から俺は悪趣味だと言っていただろう。